2011.03.25 斎藤助教の研究成果がImmunity誌に掲載されました。

Antiviral protein Viperin promotes Toll-like receptor 7- and Toll-like receptor 9-mediated type I interferon production in plasmacytoid dendritic cells.

Saitoh T, Satoh T, Yamamoto N, Uematsu S, Takeuchi O, Kawai T, Akira S.

Immunity. 2011 Mar 25;34(3):352-63.

自然免疫は、病原体の構成成分を感知することができるパターン認識受容体によって誘導され、ウイルスをはじめとした病原体感染に対する防衛線として重要な役割を果たしています。Toll-like receptor (TLR)やRig-like receptor (RLR)などの様々なパターン認識受容体が、I型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生を誘導することで自然免疫応答に関わっていることが知られています。I型インターフェロンは、TLRやRLRによって活性化される転写因子Interferon regulatory factor (IRF) 3とIRF7によって誘導され、様々な抗ウイルス因子の発現を誘導することで宿主をウイルス感染から保護しています。ウイルスを感知し、I型インターフェロン産生を誘導する経路としては、次の3つがよく知られています。形質細胞様樹状細胞においては、リソソームにおいてRNAウイルスのssRNAとDNAウイルスのssDNAをそれぞれ認識したTLR7とTLR9が転写因子IRF7の活性化を誘導し、I型インターフェロンを誘導します。細胞内に侵入したRNAウイルスの核酸はRLRにより認識され、I型インターフェロン産生が誘導されます。細胞内に侵入したDNAウイルスを認識するメカニズムについてはまだ不明な点もありますが、STINGと呼ばれるシグナル伝達因子が重要な役割を果たしていることが明らかになっています。I型インターフェロン産生を誘導するこれらの経路の活性化には、インターフェロン誘導性遺伝子が深く関わっており、前述したTLR7、Rig-i、IRF7なども該当します。しかしながら、I型インターフェロンによって誘導される遺伝子は多岐にわたっており、その中には自然免疫の制御における役割がよく分かっていない遺伝子も数多く残されています。今回の研究で私たちは、様々なパターン認識受容体の活性化により発現が誘導されるインターフェロン誘導性遺伝子Viperin(正式名RSAD2)に着目しました。Viperinは、サイトメガロウイルスの感染によって誘導される遺伝子として見出され、C型肝炎ウイルスをはじめとしたフラビウイルスの増殖を抑制することが既に知られています。Viperinは、N末端側に両親媒性のαへリックスドメインを有し、小胞体と脂肪滴に存在しています。私たちは、Viperinの自然免疫応答における役割を明らかにするために、Viperin遺伝子改変マウスを作製しました。解析の結果、直接的なウイルス複製阻害に加えて、形質細胞様樹状細胞からのI型インターフェロンの産生においてもViperinは重要な役割を果たしていることを見出しました。
Viperinは、形質細胞様樹状細胞においてTLR7/9の刺激よりIRF7依存的に強く発現誘導され、脂肪滴上に局在しています。Viperin遺伝子改変マウスを用いた解析から、Viperinを欠損した形質細胞様樹状細胞においては、TLR7/9を介したIRF7依存的なI型インターフェロンの産生が顕著に減弱していることが明らかになりました。Viperinは、形質細胞様樹状細胞においてTLR7/9の下流でIRF7を活性化するために働くシグナル伝達因子として知られているTRAF6とIRAK1に結合し、これらの因子を脂肪滴上へとリクルートしています。その結果、TRAF6によるIRAK1のK63結合型のユビキチン化が効率的に誘導され、修飾を受けたIRAK1によるIRF7活性化を介してI型インターフェロンの産生が促進されます。一方で、細胞内に侵入したウイルス核酸を感知したRig-like receptorを介したI型インターフェロンの産生には、Viperinは関与していません。これらの解析結果から、Viperinは形質細胞様樹状細胞におけるTLR7/9を介したI型インターフェロンの産生を促進することによって、抗ウイルス応答に関わっていることが明らかになりました。
近年の解析から、自然免疫応答のシグナル伝達には様々な細胞内小器官が重要な役割を果たしていることが明らかになっています。いくつか例を挙げると、様々な危険信号を感知することで知られるパターン認識受容体であるNALP3は、ミトコンドリア上に存在するシグナル伝達因子ASCを介してCaspase-1を活性化し、炎症性サイトカインであるIL-1βとIL-18の発現を誘導します。他にも、細胞内に侵入したRNAウイルスを感知したRLRは、ミトコンドリアの膜蛋白質でありシグナル伝達因子でもあるIPS-1を介してTBK1によるIRF3活性化を誘導し、I型インターフェロンの産生を誘導することが知られています。私たちも昨年、細胞内に侵入した外来DNAを感知した細胞においては、小胞体の膜蛋白質でありシグナル伝達因子でもあるSTINGが、小胞体からゴルジ体さらに細胞内の膜構造体へ移行して、リン酸化酵素TBK1によるIRF3の活性化を誘導することを報告しています。さらに今回の解析から、リソソームにおいてウイルスRNAを感知した形質細胞様樹状細胞においては、脂肪滴上に存在するViperinを介してシグナル伝達機構が活性化し、I型インターフェロンの産生が誘導されることが明らかになりました。パターン認識受容体が自然免疫応答を誘導する際に、なぜ細胞小器官をシグナル伝達の中継点とする必要があるのか?その理由についてはまだよく分かっていません。おそらく、限られた数の制御因子によってシグナルを伝えるためには、制御因子を細胞内に自由に拡散させてしまうよりも、制御因子がある程度限られた場に集まった方が効率的であるためと考えられますが、それでもなぜミトコンドリア上でシグナル伝達が起こるのか?なぜ脂肪滴上で起こるのか?といった疑問が残ります。自然免疫の制御における細胞小器官の役割を解明することは、感染防御応答を深く理解するうえで非常に重要な研究課題であると考えられます。


図の解説.形質細胞様樹状細胞におけるTLR9シグナル伝達.
ウイルスをはじめとした病原体の非メチル化CpG一本鎖DNAは、エンドソームとリソソームに局在するTLR9によって感知され、自然免疫応答が誘導されます。エンドソームにおいてDNAを感知したTLR9は、MyD88-IRAK4-TRAF6を介してIκB kinase複合体を活性化し、IκBαの分解を誘導することで転写因子RelA/p65の核移行を促進します。核に移行したRelA/p65は、NF-κBとして炎症性サイトカインの転写を誘導します。リソソームにおいてDNAを感知したTLR9は、MyD88-IRAK4-IRAK1-TRAF6を介して転写因子IRF7のリン酸化を誘導し、IRF7の核移行を促進します。核に移行したIRF7は、I型インターフェロンやインターフェロン誘導性遺伝子群の転写を誘導します。脂肪滴表面上に存在するViperinは、TRAF6によるIRAK1のK63結合型ユビキチン化が効果的に行われるようにIRAK1とTRAF6をリクルートし、シグナル伝達を促進します。

齊藤_図.jpg

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