2010.11.12 土田君と河合准教授の研究成果がImmunity誌に掲載されました。

The Ubiquitin Ligase TRIM56 Regulates Innate Immune Responses to Intracellular Double-Stranded DNA.
Tsuchida T, Zou J, Saitoh T, Kumar H, Abe T, Matsuura Y, Kawai T, Akira S.
Immunity. 2010 Nov 10. [Epub ahead of print]


 自然免疫は細菌、ウイルス、寄生虫といった感染病原体の初期認識ならびにその後の炎症反応の惹起や獲得免疫の誘導に重要な役割を果たしている生体防御メカニズムである。DNAウイルスや細菌のゲノム中に存在する二重鎖DNAは自然免疫系により認識され、I型インターフェロン(IFN)や炎症性サイトカインを誘導する。しかしながら、DNAを直接認識する細胞内センサーやそのシグナル伝達経路は不明な点が多い。DNA刺激に応じたI型IFN産生には、リン酸化酵素TBK1が主要な働きをしている。TBK1は刺激に応じて転写因子IRF3をリン酸化しIFNbを含む一連の標的遺伝子の発現が誘導される。DNAセンサー下流に位置しTBK1と結合し活性化するシグナル伝達分子としてSTING(別名MITA、MPYS、ERIS)が同定されている。
 今回、合成B型DNA [poly (dA:dT)・poly (dT:dA)] DNAを用いて、DNAに対する自然免疫応答を正に制御する分子のスクリーニングを行い、TRIM(tripartite motif)タンパク質ファミリータンパク質の一つTRIM56を得た。TRIMタンパク質ファミリーは、ヒトやマウスで60種類程度同定されており、その多くはRINGフィンガー型E3ユビキチンリガーゼ活性をつ。TRIM56を細胞内に発現させると合成DNA刺激やDNAが引き金となる細菌感染に伴うI型IFNの産生誘導を上昇させた。その一方、TRIM56をノックダウンした細胞ではI型IFN産生が減少した。興味深いことに、TRIM56をSTINGと共に細胞内に発現させると相乗的にIFNbプロモーターを活性化した。詳しく調べてみると、TRIM56はユビキチンリガーゼとして機能し、STINGをリジン(K)63型ポリユビキチン化することが分かった。TRIM56はSTINGの150番目のリジンのユビキチン化を誘導するが、このリジンをアルギニンに変化させた変異体(STING K150R)はIFNbプロモーターを活性化することができなかった。さらに、この部位の修飾は、STINGの二量体形成に必要であった。また、STING K150RはTBK1と結合することができなかった。以上のことから、TRIM56によるSTINGのユビキチン化は、STING二量体形成とTBK1のリクルートを促すと考えられる。一方、in vitroにおいてTRIM56とDNAとの間に結合活性が認められないことから、TRIM56自身はDNAセンサーとして機能しているわけではなく、STINGの調節分子として機能していると予想される。
 今後のDNAセンサーの同定やそのシグナル伝達経路のさらなる解明はDNAウイルスや細菌に対する免疫応答理解にとどまらず、DNA異常認識が起因すると考えられる自己免疫疾患や炎症性疾患の発症機序やDNAワクチン効果発揮メカニズムを理解する上で重要であると考えられる。


河合図.jpg


ページトップへ