これまでの研究

ここでは、私たちがこれまで行ってきた自然免疫に関する研究内容を紹介します。


IL-1受容体のアダプター分子としてのMyD88の発見
IL-6刺激によりマクロファージへ分化する特徴をもつM1細胞は、IL-6刺激によりMyD (myeloid differentiation primary response)遺伝子群の発現を誘導します。これらの中で、MyD88と呼ばれる分子はIL-1受容体やショウジョウバエのTollの細胞質内領域と相同性が高い領域(TIRドメイン)とデスドメインを有しています。私たちはこの分子に興味を抱き、MyD88ノックアウトマウスの作製を行いました。MyD88ノックアウトマウスを調べてみると、IL-1やIL-1類似サイトカインIL-18に対する反応が著明に減少していることが分かりました。さらに、MyD88がIL-18受容体の細胞質内領域と結合していることを見出し、MyD88がIL-1受容体ファミリーの細胞内アダプター分子であることを明らかとしました。

Adachi O, Kawai T, Takeda K, Matsumoto M, Tsutsui H, Sakagami M, Nakanishi K, Akira S. 
Targeted disruption of the MyD88 gene results in loss of IL-1- and IL-18-mediated function.
Immunity. 1998 Jul;9(1):143-50.


LPSに応答しないMyD88ノックアウトマウス
LPS(リポ多糖、エンドトキシン)はグラム陰性細菌の菌体成分でマクロファージなどの細胞に作用して炎症性サイトカイン・炎症性生理活性分子(NOなど)の産生を誘導します。さらに、多量のLPSは播種性血管内凝固、多臓器不全などの病態をひきおこし、敗血症性ショックの原因となることが知られています。私たちはMyD88ノックアウトマウスを解析する過程で、このマウスではLPSに対する反応が顕著に低下していることに気づきました。MyD88ノックアウトマウスにLPSを腹腔内投与したところ、野生型マウスがほとんど4日以内に死亡したのに対してMyD88ノックアウトマウスは全例生存していました。さらにMyD88ノックアウトマウスのマクロファージはLPS刺激により炎症性サイトカインをまったく産生しませんでした。当時、LPSの細胞膜上の受容体としてCD14が知られていました。LPSは血清中のLPS結合タンパク質(LBP)と複合体を作り、これがCD14と結合して細胞が活性化されます。しかし、CD14は、膜貫通ドメインは持たないことから、シグナル伝達に関わる受容体が存在していると考えられました。したがって、MyD88をアダプターとして使うと考えられる分子がLPSからのシグナル伝達分子に関わる受容体ではないかと推測されました。

Kawai T, Adachi O, Ogawa T, Takeda K, Akira S.
Unresponsiveness of MyD88-deficient mice to endotoxin.
Immunity. 1999 Jul;11(1):115-22.


LPS認識に関わるTLR4
Tollは、もともとショウジョウバエの個体発生に関与する分子として同定されましたが、その後の解析から真菌に対する感染防御にも必須であることが明らかにされました。また、ヒトやマウスにおいてもTollと似た構造を示す分子が存在し、これらはToll-like receptor (TLR)ファミリーと名付けられました。これまでに、ヒトでは10数種類のTLRが同定されています。TollやTLRはロイシンに富む繰り返し構造を示す細胞外領域とIL-1受容体と相同性を示す細胞質内領域(TIRドメイン)を有しています。私たちはTLRファミリーの中からTLR4を欠損するマウスを作製し、LPSに対する応答性を検討しました。その結果、このマウスのマクロファージからの炎症性サイトカイン産生やB細胞の増殖が欠如していました。こういった表現型は、LPS低応答性マウスとして古くから知られていたC3H/HeJマウスと酷似していたため、このマウスにおけるTLR4遺伝子の配列を解析したところ、細胞内領域に点変異が存在していることを見いだしました。さらに、この変異型TLR4は下流の転写因子NF-kBを活性化することができませんでした。したがって、TLR4細胞内領域の変異がC3H/HeJマウスのLPS低応答性の原因であることが明らかとなりました。同時に、この結果はMyD88がTLR4のアダプター分子として機能していることを強く示唆しています。

Hoshino K, Takeuchi O, Kawai T, Sanjo H, Ogawa T, Takeda Y, Takeda K, Akira S.
Toll-like receptor 4 (TLR4)-deficient mice are hyporesponsive to lipopolysaccharide: evidence for TLR4 as the Lps gene product.
J Immunol. 1999 Apr 1;162(7):3749-52.


様々な病原体成分を認識するTLR2
MyD88ノックアウトマウスのLPS以外の種々の病原体構成成分に対する反応性を検討したところ、ペプチドグリカン、リポ蛋白質、核酸といった細菌構成成分に対する反応が欠如していました。こうした成分はやはりTLRにより認識されると考えられました。私たちは、TLR2ノックアウトマウスの作製と解析を通して、このマウスがグラム陽性細菌細胞膜成分に対する反応性が著明に低下していること、この構成成分のうちペプチドグリカンにまったく反応しないことを見出しました。また、TLR2ノックアウトマウスはグラム陽性細菌である黄色ブドウ球菌に対し易感染性を示すことも見出しました。その後、グラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコプラズマ由来のリポ蛋白、酵母由来のザイモザンや原虫GPIアンカーといった様々な成分に対する反応にもTLR2が関与することが分かりました。

Takeuchi O, Hoshino K, Kawai T, Sanjo H, Takada H, Ogawa T, Takeda K, Akira S.
Differential roles of TLR2 and TLR4 in recognition of gram-negative and gram-positive bacterial cell wall components.
Immunity. 1999 Oct;11(4):443-51.

Takeuchi O, Kaufmann A, Grote K, Kawai T, Hoshino K, Morr M, Mühlradt PF, Akira S.
Cutting edge: preferentially the R-stereoisomer of the mycoplasmal lipopeptide macrophage-activating lipopeptide-2 activates immune cells through a toll-like receptor 2- and MyD88-dependent signaling pathway.
J Immunol. 2000 Jan 15;164(2):554-7.

Takeuchi O, Hoshino K, Akira S.
Cutting edge: TLR2-deficient and MyD88-deficient mice are highly susceptible to Staphylococcus aureus infection.
J Immunol. 2000 Nov 15;165(10):5392-6.


TLR1、TLR6:ヘテロダイマーとして機能するTLR
TLR2ノックアウトマウスのマクロファージは、大腸菌由来のリポ蛋白(合成品Pam3CSK4)やマイコプラズマ由来のリポ蛋白 (MALP-2)に反応しません。ところが、TLR6ノックアウトマウスのマクロファージでは、Pam3CSK4に対しては正常に反応するがMALP-2には反応しないことが分かりました。リポ蛋白の活性中心はアミノ末端に存在する脂質部分に依存しますが、マイコプラズマと大腸菌由来のリポ蛋白では脂質部分の構造が異なっています。大腸菌由来のリポ蛋白のN末端に存在するシスティンは3つのアシル基によって修飾されていますが、マイコプラズマ由来のリポ蛋白には、2つのアシル基が存在しています。この違いがTLR6の関わりを反映していると考えられました。実際、マイコプラズマ由来のリポ蛋白のシスティンに3つのアシル基修飾を行うと、TLR6ノックアウトマウスのマクロファージも反応するようになりました。このように、TLR2とTLR6がヘテロダイマーを形成することにより、マイコプラズマ由来のリポ蛋白を認識することが判明しました。続いて、TLR1ノックアウトマウスを作成して解析してみると、マイコプラズマではなく大腸菌由来のリポ蛋白を認識することが分かりました。これらのことから、TLR1やTLR6はリポ蛋白の脂質部分の構造の違いを認識していることが明らかになりました。

Takeuchi O, Sato S, Horiuchi T, Hoshino K, Takeda K, Dong Z, Modlin RL, Akira S.
Cutting edge: role of Toll-like receptor 1 in mediating immune response to microbial lipoproteins.
J Immunol. 2002 Jul 1;169(1):10-4.

Takeuchi O, Kawai T, Mühlradt PF, Morr M, Radolf JD, Zychlinsky A, Takeda K, Akira S.
Discrimination of bacterial lipoproteins by Toll-like receptor 6.
Int Immunol. 2001 Jul;13(7):933-40.


TLR5によるフラジェリンの認識
腸内細菌といった運動性細菌が保有する鞭毛の中には、フラジェリンと呼ばれる蛋白質が存在し、免疫細胞を活性化することが知られています。私たちは、共同研究によりTLR5がフラジェリンを認識する受容体であることを報告しました。その後、私たちはTLR5ノックアウトマウスを用いて、フラジェリンによるin vivoの炎症反応の誘発にTLR5が必須であること、腸管上皮細胞よりも粘膜固有層に存在する樹状細胞がTLR5を強く発現するとともに、腸内常在菌と病原体を区別していることを見出しました。さらに、マウス小腸粘膜固有層のCD11c陽性細胞は4つの細胞群に分かれ、中でもCD11chighCD11bhighの樹状細胞がTLR5を特異的に発現していることを見つけました。この樹状細胞は、フラジェリン刺激によってB細胞をIgA産生形質細胞に分化させるとともに、抗原特異的なTh17細胞とTh1細胞の分化も誘導することが分かりました。さらに、この樹状細胞はレチノイン酸を産生し、濃度依存的にIgA産生細胞やTh17細胞の誘導を行うことも明らかになりました。したがって、この樹状細胞は、TLRの刺激を介して局所的なIgA産生と全身的なTh反応を惹起することで、細菌に対する生体防御を効果的に誘導すると考えられます。

Uematsu S, Jang MH, Chevrier N, Guo Z, Kumagai Y, Yamamoto M, Kato H, Sougawa N, Matsui H, Kuwata H, Hemmi H, Coban C, Kawai T, Ishii KJ, Takeuchi O, Miyasaka M, Takeda K, Akira S.
Detection of pathogenic intestinal bacteria by Toll-like receptor 5 on intestinal CD11c+ lamina propria cells.
Nat Immunol. 2006 Aug;7(8):868-74.

Uematsu S, Fujimoto K, Jang MH, Yang BG, Jung YJ, Nishiyama M, Sato S, Tsujimura T, Yamamoto M, Yokota Y, Kiyono H, Miyasaka M, Ishii KJ, Akira S.
Regulation of humoral and cellular gut immunity by lamina propria dendritic cells expressing Toll-like receptor 5.
Nat Immunol. 2008 Jul;9(7):769-76.


TLR9によるDNAの認識
1980年代、BCGのもつ抗腫瘍効果がDNA成分によることが徳永らにより示されました。細菌のDNAと比べると、哺乳類のDNAではCとGが隣り合って存在する頻度が低く、その大部分はメチル化を受けています。対照的に、細菌のDNAは非メチル化CpGを含むDNA(CpG DNA)を多く含み、これが免疫活性化能を示します。CpG DNAは樹状細胞に作用しI型インターフェロンを強く誘導するとともに、B細胞にも働きかけ活性化を誘導します。また、Th1細胞分化も強く誘導します。これらのことから、感染症、アレルギー、癌などへのワクチンアジュバントとしての応用が強く期待されています。私たちは、データベース上から新規TLR9を同定しました。ノックアウトマウスの解析から、TLR9が細菌やウイルス由来のDNAに対する反応に必須の受容体であることを見いだしました。20-30塩基の合成CpG DNAにおいてもやはり免疫活性化能が認められ、この活性もTLR9に依存していました。

Hemmi H, Takeuchi O, Kawai T, Kaisho T, Sato S, Sanjo H, Matsumoto M, Hoshino K, Wagner H, Takeda K, Akira S.
A Toll-like receptor recognizes bacterial DNA.
Nature. 2000 Dec 7;408(6813):740-5.


マラリア感染におけるTLR9の役割
マラリア感染症の代表的な症状に周期的な発熱が上げられます。感染赤血球が破裂し原虫が血中に放出される時と一致して起こります。マラリア原虫は赤血球内分裂期においてヘモグロビンを消費し、遊離ヘムをポリマーの状態にしたヘモゾインと呼ばれる代謝産物を産生します。ヘモゾインは赤血球内で合成されると原虫(シゾント)と共に血中に放出され、その後網内系でマクロファージなどにより貪食され細胞内に蓄積します。私たちは、熱帯熱マラリア原虫より精製したヘモゾインがTLR9を介して炎症反応を引き起こすことを明らかにしました。その後、実際のマラリア感染におけるTLR9の役割を検討し、脳マラリアのモデルにおいてTLR9とTLR2を介した自然免疫反応が致死性誘導に重要であることを見いだしました。

Coban C, Ishii KJ, Kawai T, Hemmi H, Sato S, Uematsu S, Yamamoto M, Takeuchi O, Itagaki S, Kumar N, Horii T, Akira S.
Toll-like receptor 9 mediates innate immune activation by the malaria pigment hemozoin.
J Exp Med. 2005 Jan 3;201(1):19-25.

Coban C, Ishii KJ, Uematsu S, Arisue N, Sato S, Yamamoto M, Kawai T, Takeuchi O, Hisaeda H, Horii T, Akira S.
Pathological role of Toll-like receptor signaling in cerebral malaria.
Int Immunol. 2007 Jan;19(1):67-79.


TLR7の発見:免疫療法への期待
イミダゾキノリン(imidazoquinolines)、Imiquimod、R-848 (Resiquimod)は、新たな抗ウイルス免疫賦活剤として注目を浴びています。この薬剤は、体内からのインターフェロン産生を誘導することによって免疫系に働きかけ、抗ウイルス活性を発揮します。従来のウイルスを直接標的とした抗ウイルス剤とは異なり、再発予防にも効果があると期待されます。Imiquimod(商品名Aldala)は、ヒトパピローマウイルスによって引きおこされる尖型コンジロームの治療薬として1997年から使われています。また、Imiquimodより100倍ほど活性の強いR-848は、性器ヘルペスの治療薬として現在開発が進められています。私たちは、データベースから新規TLR7を見つけ、ノックアウトマウスの解析からTLR7がImiquimodとR-848に対する応答に必須であることを明らかにしました。さらに、膀胱癌に対し臨床応用されているブロピリミンや抗ガン剤としての臨床応用が期待されているロキソリビンも、TLR7によって認識されることを見出しました。これらの結果は、TLRを介する自然免疫系の活性化が感染症や腫瘍に対する免疫療法へ応用可能であることを示しています。
その後、私たちは共同研究を通しTLR7やTLR7と最もホモロジーの高いTLR8の自然界におけるリガンドを見つけ報告しました。HIVやInfluenza由来の一本鎖RNA、合成G-Uに富んだ合成オリゴRNAがマウスにおいてTLR7、またヒトにおいてはTLR8を介して認識されることが分かりました。

Hemmi H, Kaisho T, Takeuchi O, Sato S, Sanjo H, Hoshino K, Horiuchi T, Tomizawa H, Takeda K, Akira S.
Small anti-viral compounds activate immune cells via the TLR7 MyD88-dependent signaling pathway.
Nat Immunol. 2002 Feb;3(2):196-200.

Akira S, Hemmi H.
Recognition of pathogen-associated molecular patterns by TLR family. 
Immunol Lett. 2003 Jan 22;85(2):85-95. Review.

Heil F, Hemmi H, Hochrein H, Ampenberger F, Kirschning C, Akira S, Lipford G, Wagner H, Bauer S.
Species-specific recognition of single-stranded RNA via toll-like receptor 7 and 8.
Science. 2004 Mar 5;303(5663):1526-9. Epub 2004 Feb 19.

Diebold SS, Kaisho T, Hemmi H, Akira S, Reis e Sousa C.
Innate antiviral responses by means of TLR7-mediated recognition of single-stranded RNA.
Science. 2004 Mar 5;303(5663):1529-31.


TLRを介するシグナル伝達経路:MyD88非依存的経路の発見
私たちは、各TLRにより認識される病原体成分を見つけると同時に、細胞内シグナル伝達経路の解析も行いました。MyD88ノックアウトマウスのマクロファージはLPS刺激に対し炎症性サイトカインを産生しないものの、NF-kBとMAPキナーゼの活性化が誘導されていました。ただ、野生型マウスの細胞と比べると、活性化開始時間がノックアウトマウスの細胞では10分程度遅くなっていました。また、LPS刺激による樹状細胞の活性化もMyD88非依存的に誘導されることが分かりました。一方、TLR4ノックアウトマウスでは、LPS刺激によるNF-kBやMAPキナーゼの活性化はまったく認められませんでした。さらに、TLR2リガンド刺激後のNF-kBやMAPキナーゼの活性化はMyD88ノックアウトマウスの細胞では障害されていました。これらのことから、TLR4シグナル伝達経路には"MyD88依存的経路"以外に非依存的経路が存在していることが示唆されました。私たちは、MyD88ノックアウトマウスマクロファージにおけるLPS刺激前後での遺伝子発現の違いを解析し、インターフェロン誘導性遺伝子群がMyD88非依存的に誘導されてくることを見いだしました。さらに、LPS刺激に応じて転写因子IRF3がMyD88非依存的に活性化され細胞質から核へ移行し、これらインターフェロン誘導性遺伝子の発現を制御することを見出しました。つまり、 TLR4はIRF3活性化へ至る"MyD88非依存的経路"を有していると考えられました。

Kawai T, Adachi O, Ogawa T, Takeda K, Akira S.
Unresponsiveness of MyD88-deficient mice to endotoxin.
Immunity. 1999 Jul;11(1):115-22.

Kawai T, Takeuchi O, Fujita T, Inoue J, Mühlradt PF, Sato S, Hoshino K, Akira S.
Lipopolysaccharide stimulates the MyD88-independent pathway and results in activation of IFN-regulatory factor 3 and the expression of a subset of lipopolysaccharide-inducible genes.
J Immunol. 2001 Nov 15;167(10):5887-94.

Kaisho T, Takeuchi O, Kawai T, Hoshino K, Akira S.
Endotoxin-induced maturation of MyD88-deficient dendritic cells.
J Immunol. 2001 May 1;166(9):5688-94.


TIRドメインをもつ新たなアダプター分子群の発見
2001年、TIRドメインを持つ新たなアダプター分子としてTIRAP/Malが同定されました。in vitroの実験から、TIRAP/MalはTLR4シグナル伝達経路において"MyD88非依存的経路"を制御するアダプター分子であることが示唆されました。ところが、私たちがTIRAP/Malノックアウトマウスを作製し解析してみると、この分子は"MyD88非依存的経路"に関与していないことが分かりました。それどころか、TIRAPはTLR2とTLR4を介した"MyD88依存的経路"の活性化に関与していました。つまり、TIRAPはMyD88をTLR2、TLR4に結合させる橋渡し的な役割を果たすアダプター分子でした。
私たちはさらにデータベース検索を行い、TIRドメインをもつ新たなアダプター分子TRIFを見つけました。細胞株への強制発現によりTRIFはベータインターフェロン遺伝子のプロモーター活性を著明に上昇させることが分かりました。TRIFノックアウトマウスを作製し解析を行ったところ、LPS (TLR4リガンド)やpoly I:C (TLR3リガンド)刺激によるベータインターフェロンやインターフェロン誘導性遺伝子の発現がTRIFノックアウトマクロファージでは障害されていました。また、IRF3の活性化も認められませんでした。これらのことから、TRIFはTLR3やTLR4を介するIRF3活性化に必須の役割を果たしていることが分かりました。さらに、炎症性サイトカイン産生におけるTRIFの役割も解析しました。その結果、MyD88ノックアウトマウス同様、TRIFノックアウトマウスでもLPS刺激による炎症性サイトカインの産生が障害されることが分かりました。つまり、TLR4からの炎症性サイトカイン誘導には"TRIF依存的経路(=MyD88非依存的経路)"と"MyD88依存的経路"の両方の経路の活性化が必要であることが判明しました。
私たちは、さらにデータベース検索によりTIRドメインを持つ新たな分子としてTRAMを見つけました。TRAMノックアウトマウスでは、LPS刺激による炎症性サイトカインやインターフェロン誘導遺伝子群の発現が著明に低下しておりIRF3の活性化も欠如していました。一方、poly ICに対する反応は正常でした。したがって、TRAMはTLR4とTRIFの間を橋渡しするアダプター分子である考えられました。
以上のように、TLRを介するシグナル伝達経路には少なくとも4種類のアダプター分子が関与しており、それぞれが異なる役割を演じることにより、各TLRから特異的な自然免疫反応が誘導されることが分かりました。

Yamamoto M, Sato S, Hemmi H, Sanjo H, Uematsu S, Kaisho T, Hoshino K, Takeuchi O, Kobayashi M, Fujita T, Takeda K, Akira S.
Essential role for TIRAP in activation of the signalling cascade shared by TLR2 and TLR4.
Nature. 2002 Nov 21;420(6913):324-9.

Yamamoto M, Sato S, Mori K, Hoshino K, Takeuchi O, Takeda K, Akira S.
Cutting edge: a novel Toll/IL-1 receptor domain-containing adapter that preferentially activates the IFN-beta promoter in the Toll-like receptor signaling.
J Immunol. 2002 Dec 15;169(12):6668-72.

Yamamoto M, Sato S, Hemmi H, Hoshino K, Kaisho T, Sanjo H, Takeuchi O, Sugiyama M, Okabe M, Takeda K, Akira S.
Role of adaptor TRIF in the MyD88-independent toll-like receptor signaling pathway.
Science. 2003 Aug 1;301(5633):640-3.

Yamamoto M, Sato S, Hemmi H, Uematsu S, Hoshino K, Kaisho T, Takeuchi O, Takeda K, Akira S.
TRAM is specifically involved in the Toll-like receptor 4-mediated MyD88-independent signaling pathway.
Nat Immunol. 2003 Nov;4(11):1144-50.


MyD88依存的経路の解析
"MyD88依存的経路"は主に炎症性サイトカインの誘導に必須な役割を果たしています。その下流ではNF-kBやMAPキナーゼが活性化されます。これまで、MyD88にはIRAKキナーゼファミリー(IRAK1、IRAK2、IRAK4、IRAK-M)が会合することが分かっていました。私たちは、IRAK4のキナーゼ活性がMyD88依存的経路の活性化に必須であることをノックインマウスの解析から見出しました。さらにIRAK4の下流において、IRAK1とIRAK2両者が連続的に活性化し炎症性サイトカインを誘導することを示しました。
TAK1はTRAF6近辺に位置するキナーゼであり、NF-kBとMAPキナーゼを活性化することが知られています。私たちはTAK1ノックアウトマウスを作製し解析を行いました。すると、TAK1が"MyD88依存的経路"のみならず、TRIF依存的経路の下流にも位置し、NF-kBやMAPキナーゼの活性化を制御していることがわかりました。
E2ユビキチン結合酵素であるUbc13はK63を介したポリユビキチン鎖の付加を媒介することが知られています。このK63を介したユビキチン化はTRAF6を介するNF-kBなどのシグナル伝達経路の活性化に必要であることが示唆されていました。私たちはUbc13ノックアウトマウスを作製し、Ubc13がTLRを介するシグナル伝達経路においてNF-kBではなく、むしろMAPキナーゼの活性化に選択的に関与することを突き止めました。

Sato S, Sanjo H, Takeda K, Ninomiya-Tsuji J, Yamamoto M, Kawai T, Matsumoto K, Takeuchi O, Akira S.
Essential function for the kinase TAK1 in innate and adaptive immune responses.
Nat Immunol. 2005 Nov;6(11):1087-95.

Yamamoto M, Okamoto T, Takeda K, Sato S, Sanjo H, Uematsu S, Saitoh T, Yamamoto N, Sakurai H, Ishii KJ, Yamaoka S, Kawai T, Matsuura Y, Takeuchi O, Akira S.
Key function for the Ubc13 E2 ubiquitin-conjugating enzyme in immune receptor signaling.
Nat Immunol. 2006 Sep;7(9):962-70.

Kawagoe T, Sato S, Jung A, Yamamoto M, Matsui K, Kato H, Uematsu S, Takeuchi O, Akira S.
Essential role of IRAK-4 protein and its kinase activity in Toll-like receptor-mediated immune responses but not in TCR signaling.
J Exp Med. 2007 May 14;204(5):1013-24.

Kawagoe T, Sato S, Matsushita K, Kato H, Matsui K, Kumagai Y, Saitoh T, Kawai T, Takeuchi O, Akira S.
Sequential control of Toll-like receptor-dependent responses by IRAK1 and IRAK2.
Nat Immunol. 2008 Jun;9(6):684-91.


TRIF依存的経路の解析
"TRIF依存的経路"はIRF3やNF-kBを活性化します。IRF3は未刺激状態では細胞質に留まっていますが、LPSやpoly IC刺激またウイルス感染等によりリン酸化を受けると核内へ移行し、転写因子としての機能を発揮します。IRF3をin vitroでリン酸化するキナーゼとしてIKKi (別名IKKe)とTBK1(別名NAK、T2K)と呼ばれるIKKa/b(NF-kBの活性化に必要なキナーゼ)関連キナーゼが知られています。私たちは、IKKiとTBK1を欠損するマウスの作製を行いました。TBK1ノックアウトマウスではLPSやpoly IC刺激によるIRF3のリン酸化とインターフェロン誘導性遺伝子の発現の顕著な低下が認められました。一方、IKKiノックアウトマウスはこれらの活性化はほぼ正常でした。しかしながら、TBK1とIKKiの両方を欠損した細胞において、IRF3の活性化やインターフェロン誘導性遺伝子はほぼ完全に欠如していました。これらのことから、生体内ではTBK1が主にIRF3の活性化に関与し、IKKiも部分的であるもののやはりIRF3の活性化に関与していることが分かりました。
私たちは、TRIFとTBK1が直接結合すること、この結合がIRF3の活性化に関与することを見出しました。また、TRIFはTRAF6とも結合しており、この結合はIRF3よりはむしろNF-kBの活性化を誘導することを明らかにしました。私たちは、さらにTBK1/IKKiにはTANKと呼ばれる制御分子が結合していることを報告しています。TANK欠損マウスを作製したところ、このマウスは自己免疫性糸球体腎炎を発症しました。詳しく解析してみると、TANKはI型インターフェロン産生には関与せず、TLRからの炎症性サイトカイン産生を負に制御していることが分かりました。

Shimada T, Kawai T, Takeda K, Matsumoto M, Inoue J, Tatsumi Y, Kanamaru A, Akira S.
IKK-i, a novel lipopolysaccharide-inducible kinase that is related to IkappaB kinases.
Int Immunol. 1999 Aug;11(8):1357-62.

Nomura F, Kawai T, Nakanishi K, Akira S.
NF-kappaB activation through IKK-i-dependent I-TRAF/TANK phosphorylation.
Genes Cells. 2000 Mar;5(3):191-202.

Sato S, Sugiyama M, Yamamoto M, Watanabe Y, Kawai T, Takeda K, Akira S.
Toll/IL-1 receptor domain-containing adaptor inducing IFN-beta (TRIF) associates with TNF receptor-associated factor 6 and TANK-binding kinase 1, and activates two distinct transcription factors, NF-kappa B and IFN-regulatory factor-3, in the Toll-like receptor signaling.
J Immunol. 2003 Oct 15;171(8):4304-10.

Hemmi H, Takeuchi O, Sato S, Yamamoto M, Kaisho T, Sanjo H, Kawai T, Hoshino K, Takeda K, Akira S.
The roles of two IkappaB kinase-related kinases in lipopolysaccharide and double stranded RNA signaling and viral infection.
J Exp Med. 2004 Jun 21;199(12):1641-50.

Kawagoe T, Takeuchi O, Takabatake Y, Kato H, Isaka Y, Tsujimura T, Akira S.
TANK is a negative regulator of Toll-like receptor signaling and is critical for the prevention of autoimmune nephritis.
Nat Immunol. 2009 Sep;10(9):965-72.


TLRシグナル標的遺伝子の免疫系における機能解析
TLRリガンドの刺激によりサイトカイン遺伝子を含む様々な遺伝子の発現が誘導されます。こうした様々な遺伝子の発現により免疫応答が緻密に制御されていると考えられます。
IkB-zはLPSなどTLRリガンドの刺激でMyD88依存的に発現誘導されるIkB様分子であり、核内に存在しています。IkB-zノックアウトマウスのマクロファージではTLR刺激に対するIL-6やIL-12の産生が低下していることが分かりました。また、IkB-zがNF-kBファミリーの1つp50と結合し、IL-6などの遺伝子の発現を制御していることが明らかとなりました。IkB-zはIL-6より早期に発現が誘導されます。したがって、TLR刺激によって誘導されたIkB-zが、さらにIL-6やIL-12の発現を制御するという二段階での発現制御メカニズムの存在が明らかになりました。
Zc3h12aはCCCH型Zinc finger領域を持つ蛋白質であり、LPS刺激により発現が誘導されます。私たちが作製したZc3h12aノックアウトマウスは、脾腫、リンパ節腫脹、血清Ig増加、自己抗体産生等の自己免疫症状を呈しました。マクロファージではTLR刺激に対するIL-6やIL-12p40遺伝子発現が増加しており、これは、3'-untranslated region (UTR)を介したmRNAの安定化制御によることであることを見いだしました。さらに、Zc3h12aは新規のnuclease領域を持ちIL-6 3'-UTR RNAを切断するエンドヌクレアーゼ活性を持っていました。このように、Zc3h12aはmRNA不安定化を制御することにより炎症をコントロールし、炎症性疾患発症を抑えていることが分かりました。

Yamamoto M, Yamazaki S, Uematsu S, Sato S, Hemmi H, Hoshino K, Kaisho T, Kuwata H, Takeuchi O, Takeshige K, Saitoh T, Yamaoka S, Yamamoto N, Yamamoto S, Muta T, Takeda K, Akira S.
Regulation of Toll/IL-1-receptor-mediated gene expression by the inducible nuclear protein IkappaBzeta.
Nature. 2004 Jul 8;430(6996):218-22.

Matsushita K, Takeuchi O, Standley DM, Kumagai Y, Kawagoe T, Miyake T, Satoh T, Kato H, Tsujimura T, Nakamura H, Akira S. Zc3h12a is an RNase essential for controlling immune responses by regulating mRNA decay.
Nature. 2009 Apr 30;458(7242):1185-90.


ウイルス感染とTLR:pDCにおけるMyD88依存的経路の役割
TLRシグナルの特異性はTIRドメインを持つアダプター分子群の使い分けによりある程度決定されることが明らかになってきました。しかし、TLR7とTLR9からもI型インターフェロンの産生が誘導され、これはMyD88に依存することが分かりました。TLR7とTLR9はウイルス感染に際し強くI型インターフェロンを誘導することが知られている形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid DC)に強く発現しています。つまり、pDCはTLR7やTLR9を介してウイルス核酸(RNA、DNA)を認識し、MyD88を介してI型インターフェロンを誘導する仕組みを備えていると考えられます。
私たちは、MyD88依存的経路の下流にIRF7が位置していることを見いだしました。IRF7はIRF3同様I型インターフェロン発現を誘導する転写因子として知られています。MyD88とIRF7は細胞内で複合体を形成し、TLR9刺激によりIRF7は核へ移行しました。さらにIRAK1もこの複合体中に存在し、IRF7の活性化に必須なC末端領域をリン酸化することも明らかにしました。この経路はpDCに特徴的なものであり、おそらくこの経路の存在がpDCの高いインターフェロン産生能に関わっていると考えられます。

Hoshino K, Kaisho T, Iwabe T, Takeuchi O, Akira S.
Differential involvement of IFN-beta in Toll-like receptor-stimulated dendritic cell activation.
Int Immunol. 2002 Oct;14(10):1225-31.

Hemmi H, Kaisho T, Takeda K, Akira S.
The roles of Toll-like receptor 9, MyD88, and DNA-dependent protein kinase catalytic subunit in the effects of two distinct CpG DNAs on dendritic cell subsets.
J Immunol. 2003 Mar 15;170(6):3059-64.

Kawai T, Sato S, Ishii KJ, Coban C, Hemmi H, Yamamoto M, Terai K, Matsuda M, Inoue J, Uematsu S, Takeuchi O, Akira S.
Interferon-alpha induction through Toll-like receptors involves a direct interaction of IRF7 with MyD88 and TRAF6.
Nat Immunol. 2004 Oct;5(10):1061-8.

Uematsu S, Sato S, Yamamoto M, Hirotani T, Kato H, Takeshita F, Matsuda M, Coban C, Ishii KJ, Kawai T, Takeuchi O, Akira S.
Interleukin-1 receptor-associated kinase-1 plays an essential role for Toll-like receptor (TLR)7- and TLR9-mediated interferon-{alpha} induction.
J Exp Med. 2005 Mar 21;201(6):915-23.


RLRによるウイルス認識機構の発見
これまで述べてきたように、TLRによりウイルス核酸が認識されていることが明らかとなってきました(TLR3による二本鎖RNA、TLR7による一本鎖RNA、TLR9によるDNA認識)。しかしながら、TLRが病原体成分を認識する領域は細胞外に存在しているため、ウイルスが細胞質内へと侵入し複製を行った場合の認識は困難であると考えられます。実際、MyD88/TRIF二重欠損細胞にRNAウイルスを感染、もしくはpoly ICをトランスフェクション試薬により細胞質内へと導入した場合、野生型同様にI型インターフェロン産生が誘導されます。これらのことは、TLR非依存的なRNAウイルス感染認識機構が存在することを示唆しています。
2004年、藤田、米山らにより、CARD領域とヘリカーゼ領域を持つRIG-Iが発現スクリーニングから同定され、二本鎖RNAの細胞質内での認識に関わることが示唆されました。私たちは、ウイルス感染におけるRIG-I及び、そのファミリー分子MDA5(これらはRIG-I-like receptor: RLRと呼ばれています)の役割を調べる目的で、ノックアウトマウスを作製しました。その結果、RIG-Iノックアウトマウスの細胞は、様々なRNAウイルス感染に対するI型インターフェロン産生が欠如しており、MDA5欠損細胞はピコルナウイルス科に属するウイルスに対するインターフェロン産生が特異的に欠如していました。つまり、RIG-IとMDA5はそれぞれ異なるRNAウイルスを認識していることが分かりました。また、二本鎖RNAの中でもRIG-Iはin vitro合成した二本鎖RNA、MDA5はpoly I:Cを認識していることも分かりました。最近、RIG-IとMDA5が二本鎖RNAの長さの違いを認識していることを見いだしました。さらに、ノックアウトマウスの解析から、RLRは非免疫担当細胞も含め多くの細胞で必至な役割を演じている一方、TLRは特にpDCにおいて重要であることが判明しました。
  RLRの中で、LGP2はCARDを持たずRIG-IとMDA5の負調節因子として考えられていました。しかしながら、LGP2欠損マウスを作製し解析したところ、LGP2は多くのRNA型ウイルスに対する応答が低下していました。このことはLGP2がRNA型ウイルスの初期認識に関わることを示唆しています。

Kato H, Sato S, Yoneyama M, Yamamoto M, Uematsu S, Matsui K, Tsujimura T, Takeda K, Fujita T, Takeuchi O, Akira S.
Cell type-specific involvement of RIG-I in antiviral response.
Immunity. 2005 Jul;23(1):19-28.

Kato H, Takeuchi O, Sato S, Yoneyama M, Yamamoto M, Matsui K, Uematsu S, Jung A, Kawai T, Ishii KJ, Yamaguchi O, Otsu K, Tsujimura T, Koh CS, Reis e Sousa C, Matsuura Y, Fujita T, Akira S.
Differential roles of MDA5 and RIG-I helicases in the recognition of RNA viruses.
Nature. 2006 May 4;441(7089):101-5. 

Kato H, Takeuchi O, Mikamo-Satoh E, Hirai R, Kawai T, Matsushita K, Hiiragi A, Dermody TS, Fujita T, Akira S.
Length-dependent recognition of double-stranded ribonucleic acids by retinoic acid-inducible gene-I and melanoma differentiation-associated gene 5. 
J Exp Med. 2008 Jul 7;205(7):1601-10.

Satoh T, Kato H, Kumagai Y, Yoneyama M, Sato S, Matsushita K, Tsujimura T, Fujita T, Akira S, Takeuchi O.
LGP2 is a positive regulator of RIG-I and MDA5-mediated antiviral responses.
Proc Natl Acad Sci USA. 2010 Jan 26;107(4):1512-7.

RLRを介するシグナル伝達経路の解析:IPS-1の同定
RLRはCARD領域を持ち、この領域が下流へのシグナル伝達経路の活性化に重要です。私たちは発現スクリーニングにより、ベータインターフェロン遺伝子のプロモーターを活性化することのできる分子を同定し、IPS-1と名付けました。IPS-1はRLRのCARDと相同性を持つCARD領域が存在しています。この領域を介して結合することも認められたことから、RLRのアダプター分子ではないかと考えられました。IPS-1ノックアウトマウスを作製するとこのマウスの細胞は様々なRNAウイルス感染に対するインターフェロンや炎症性サイトカインの産生が欠如しており、IRF3やNF-kBの活性化も減少していました。さらに、このマウスはRIG-I、MDA5により認識される水疱性口内炎ウイルスや脳心筋炎ウイルスに対し易感染性を示しました。したがって、IPS-1はRLRで認識されるウイルスの排除に対し必須の役割を果たすアダプター分子であることが判明しました。また、IPS-1を介するシグナル伝達経路を解析する中で、私たちはFADDやCaspase-10/-8がIPS-1の下流においてNF-kB活性化を制御する可能性を見いだしました。

Kawai T, Takahashi K, Sato S, Coban C, Kumar H, Kato H, Ishii KJ, Takeuchi O, Akira S.
IPS-1, an adaptor triggering RIG-I- and Mda5-mediated type I interferon induction.
Nat Immunol. 2005 Oct;6(10):981-8.

Takahashi K, Kawai T, Kumar H, Sato S, Yonehara S, Akira S.
Roles of caspase-8 and caspase-10 in innate immune responses to double-stranded RNA.
J Immunol. 2006 Apr 15;176(8):4520-4.

Kumar H, Kawai T, Kato H, Sato S, Takahashi K, Coban C, Yamamoto M, Uematsu S, Ishii KJ, Takeuchi O, Akira S.
Essential role of IPS-1 in innate immune responses against RNA viruses.
J Exp Med. 2006 Jul 10;203(7):1795-803.


獲得免疫誘導におけるTLR、RLR、NLRの役割
自然免疫系の活性化は、B細胞からの抗体産生やCD4陽性およびCD8陽性T細胞応答といった獲得免疫応答の活性化にも重要な役割を果たしています。私たちは、TLRおよびRLRからのシグナル伝達経路を欠失したマウスを用いて、インフルエンザAウイルスやリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV) 感染に対する獲得免疫応答における役割の検討を行いました。インフルエンザAウイルス気道感染後に誘導される抗体産生ならびにCD4陽性の活性化はTLR7ノックアウトマウスで著名に減少しており、IPS-1ノックアウトマウスでは正常でした。また、ワクチン株を用いた実験から感染防御にはRLRよりTLR7による認識がより重要であることが判明しました。また、LCMVを用いた実験でも、TLRによる認識がRLRによる認識より獲得免疫誘導には重要な役割を果たしていることが分かりました。これに対し、poly ICによる獲得免疫誘導やNK細胞活性化には、TLR3とRLRを介した両者の認識が重要な役割を果たしていました。TLRとRLRがどのような細胞で機能し、その後の獲得免疫誘導を緻密に制御しているのか今後明らかにする必要があります。
  一方、細胞内センサーとしてRLR以外にNod-like receptor (NLR)が知られています。NLRは20種類を超えるメンバーから形成されていますが、その多くの機能は不明です。私達はNLRの一つNLRP3が真菌等に存在するベータグルカンの認識に関わり、これを介する経路が主にB細胞からの抗原特異的抗体産生を制御していることを見出しました。

Koyama S, Ishii KJ, Kumar H, Tanimoto T, Coban C, Uematsu S, Kawai T, Akira S.
Differential role of TLR- and RLR-signaling in the immune responses to influenza A virus infection and vaccination.
J Immunol. 2007 Oct 1;179(7):4711-20.

Kumar H, Koyama S, Ishii KJ, Kawai T, Akira S.
Cutting edge: cooperation of IPS-1- and TRIF-dependent pathways in poly IC-enhanced antibody production and cytotoxic T cell responses.
J Immunol. 2008 Jan 15;180(2):683-7.

Jung A, Kato H, Kumagai Y, Kumar H, Kawai T, Takeuchi O, Akira S.
Lymphocytoid choriomeningitis virus activates plasmacytoid dendritic cells and induces a cytotoxic T-cell response via MyD88.
J Virol. 2008 Jan;82(1):196-206.

Miyake T, Kumagai Y, Kato H, Guo Z, Matsushita K, Saitoh T, Kawagoe T, Kumar H, Jang MH, Kawai T, Tani T, Takeuchi O, Akira S.
Poly I:C-induced activation of NK cells by CD8 alpha+ dendritic cells via the IPS-1 and TRIF-dependent pathways.
J Immunol. 2009 Aug 15;183(4):2522-8.

Kumar H, Kumagai Y, Tsuchida T, Koenig PA, Satoh T, Guo Z, Jang MH, Saitoh T, Akira S, Kawai T.
Involvement of the NLRP3 inflammasome in innate and humoral adaptive immune responses to fungal beta-glucan.
J Immunol. 2009 Dec 15;183(12):8061-7.


生体内におけるアルファインターフェロン産生メカニズムの解析
実際の生体内での病原微生物感染の場において、自然免疫細胞の動態や活性化状態、サイトカイン産生、細胞間相互作用などをモニターすることは、免疫応答の実態を知る上で必要なこととなります。私たちは、I 型インターフェロンの生体内での発現をモニターするためにインターフェロンalpha6 プロモーター下にGFPを発現するノックインマウスの作製を行いました。その結果、ウイルス感染に対しアルファインターフェロンを産生する新たな細胞として肺胞マクロファージを同定しました。さらに、感染経路により異なる免疫細胞がアルファインターフェロン産生を担当することも明らかなりました。
また、pDCにおいて、アルファインターフェロン産生がウイルス複製非依存的に誘導されることがこのマウスを用いた実験から明らかになりました。この誘導はTLRを介した認識と、インターフェロン受容体からの正のフィードバック機構が必要でした。一方、このフィードバック機構が欠落したpDCでは、ウイルスは細胞質内において複製依存的にRLRで認識されることが分かりました。

Kumagai Y, Takeuchi O, Kato H, Kumar H, Matsui K, Morii E, Aozasa K, Kawai T, Akira S.
Alveolar macrophages are the primary interferon-alpha producer in pulmonary infection with RNA viruses.
Immunity. 2007 Aug;27(2):240-52.

Kumagai Y, Kumar H, Koyama S, Kawai T, Takeuchi O, Akira S.
Cutting Edge: TLR-Dependent viral recognition along with type I IFN positive feedback signaling masks the requirement of viral replication for IFN-{alpha} production in plasmacytoid dendritic cells.
J Immunol. 2009 Apr 1;182(7):3960-4.


二本鎖DNA認識機構の発見
自然免疫系を活性化するCpG DNAはTLR9によって認識されますが、私たちはTLR非依存的に自然免疫系を活性化できるDNAが存在することを見いだしました。多くのDNAを用いたスクリーニングから、ある種の二本鎖DNAを細胞内へと導入するとI型インターフェロンを強く誘導することが分かりました。二本鎖DNAの中でも、右巻き螺旋のB型DNAが強い活性を持っていました。一方、左巻き螺旋のZ型DNAの活性は弱いものでした。一般的に、B型DNAは病原体のみならず宿主細胞にも見られますが、通常免疫系により認識されることはないと考えられています。しかし、ウイルスや細菌のDNAが細胞内へと侵入した場合や、宿主細胞のDNAがダメージにより放出された場合に、宿主はDNAを認識するものと考えられます。私たちはこの二重鎖DNAがTBK1を介してI型インターフェロンを誘導することを示しました。この経路はTLRやRLRと非依存的に活性化することから、未知のセンサーにより認識されると考えられます。
 また、私たちはDNAワクチンの作用メカニズムにも注目しました。DNAワクチンとはプラスミドDNAに抗原をコードする遺伝子を組み込んだもので、生体に投与すると抗原特異的な免疫反応を誘導することができ次世代型ワクチンとして期待されています。私たちは、DNAの右巻き二重螺旋構造がアジュバントとして作用しTBK1を介してワクチン効果を発揮することを見いだしました。

Ishii KJ, Coban C, Kato H, Takahashi K, Torii Y, Takeshita F, Ludwig H, Sutter G, Suzuki K, Hemmi H, Sato S, Yamamoto M, Uematsu S, Kawai T, Takeuchi O, Akira S.
A Toll-like receptor-independent antiviral response induced by double-stranded B-form DNA.
Nat Immunol. 2006 Jan;7(1):40-8.

Ishii KJ, Kawagoe T, Koyama S, Matsui K, Kumar H, Kawai T, Uematsu S, Takeuchi O, Takeshita F, Coban C, Akira S.
TANK-binding kinase-1 delineates innate and adaptive immune responses to DNA vaccines.
Nature. 2008 Feb 7;451(7179):725-9.


オートファジー関連分子の自然免疫における役割
オートファジーと呼ばれる蛋白質分解の制御機構は、不溶性の凝集蛋白質の除去に関わることで神経変性疾患の発症に関与し、また細胞内に侵入した病原性細菌の排除を行うことで感染防御にも重要な役割を果たすことが知られています。私たちはオートファジーが自然免疫応答時の炎症反応において果たす役割を解明するために、Atg16L1と呼ばれるオートファジーに必須の因子を欠損したマウスを作製し解析を行いました。その結果、Atg16L1ノックアウトマウスのマクロファージではLPS刺激により、大量のIL-1betaとIL-18を産生し、強い炎症反応を引き起こすことが分かりました。さらに、尿酸結晶による炎症性サイトカイン産生の過剰な誘導も認められました。また、Atg16L1ノックアウトマウスは大腸炎の実験モデルにおいて高い感受性を示し、オートファジーの制御異常が腸炎の発症に関わる可能性が示唆されました。Atg16L1分子は、その遺伝子変異とクローン病の発症との関連が報告されていることから、オートファジーによる炎症応答制御の解析は、炎症性疾患発症のメカニズム解明や治療に繋がることが期待されます。

Saitoh T, Fujita N, Jang MH, Uematsu S, Yang BG, Satoh T, Omori H, Noda T, Yamamoto N, Komatsu M, Tanaka K, Kawai T, Tsujimura T, Takeuchi O, Yoshimori T, Akira S.
Loss of the autophagy protein Atg16L1 enhances endotoxin-induced IL-1beta production.
Nature. 2008 Nov 13;456(7219):264-8.



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