ドイツで開催されたInternational Conference on Systems Biology (ICSB2011) (2011.08.28-09.01 )に参加

8月28日からドイツで行われたInternational Conference on Systems Biology (ICSB) に参加しました。ICSBへの参加は昨年のエジンバラに引き続き二回目となります。今年のICSBはハイデルベルクと銘打たれていますが、実際の開催場所は近郊の都市マンハイム。ハイデルベルクではこの学会に付属したtutorialやworkshopが開催されました。今回はこのtutorialにも参加してみました。

Tutorialでは10個近くのセッションがパラレルに行われているので、どのセッションに出るべきか迷うところです。今回は今後の研究に関わりがありそうなnetwork inferenceとheterogeneous cell populationに関するセッションに参加してみました。Network inferenceはマイクロアレイやRNA-seqなどのデータを基に細胞内でのgene regulatory networkの構造情報を抜き出す手法です。従来のクラスタリングによる関連遺伝子の候補選別よりももう少し踏み込んで要素間の構造の推定までを行います。セッション自体はテクニカルな説明に多くの時間が割かれており、実際の応用上どこまで役に立つのかまではわかりませんでしたが、既存のツールを使うだけであれば比較的簡単に試してみることが出来そうでした。ただ、推定できるネットワークの大きさの理論的な限界はデータの数と同程度とのことで、実際の応用のためには大量のHigh-throughputデータが必要になるのは間違いなさそうです。また、Heterogeneous cell populationのセッションでは三人の講演者がそれぞれ細胞集団の増殖モデル、細胞内パラメータの不均一さに基づくモデル、シミュレーションに基づく確率モデルの説明を行っていました。三人の講演者ともバックグラウンドは工学であるとのこと。私も物理出身ですが、システム生物学にはいろいろなところから研究者が流れ込んでいるということを改めて感じました。

マンハイムでの本会議には、プレナリーセッションとパラレルセッションの二つがあります。プレナリーセッションでは、大きな研究グループのリーダーがこれまでの研究を総括し、システム生物学的アプローチを用いてバイオロジーとして面白い研究を行う様子を華々しく披露していくのに対し、パラレルセッションではその舞台裏に隠されたテクニカルで泥臭い部分に関する講演が中心になります。そういう意味ではパラレルセッションの方がより具体的で実用的です。例えば、プレナリーセッションではわずか一枚のスライドで示されがちな数学模型の構築ですが、パラレルセッションでは模型のパラメータ推定やその検証方法等、数学模型にまつわる個別の問題に関する議論も盛んに行われています。これらの講演のなかでも、粒子法を用いた細胞の時空間モデリングの手法を紹介した講演は印象的でした。イメージングのデータを直接利用することで、(部分的な切り口ではありますが)細胞内の構造を忠実に計算機内で再現していく手法は見事でした。

ところで、今回の学会での最大の収穫は、他のシステム生物学の研究者との交流、とりわけ、日本人の研究者の方々との交流の機会を得たことだったかもしれません。海外にまで出かけて行った成果としては意外な感じかもしれませんが、システム生物学の分野はまだ歴史が浅いため、日本では同じ分野の研究者と出会う機会がなかなかありません。このあたりは、海外と比べて我々が出遅れている部分だと思います。しかし、これからシステム生物学の分野で世界と戦っていくためには、まずは日本人同士で協力し、情報、技術交換や共同研究を盛んにしながら切磋琢磨していく体制を整える必要があると思います。ICSBはシステム生物学に特化した最も大きな学会で、また、海外であることが手伝い、日本人同士であれば、それだけで気楽に話しかけられる雰囲気があります。レセプションやポスター発表などの機会に沢山の研究者の方と情報交換できたことは今後の大きな財産になると思います。

文責:寺口

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